精神障害者における就労継続支援B型事業実態調査報告書
平成30年4月、就労継続支援B型事業の基本報酬単価が、利用者に支払う「平均工賃額」によって区分されました。事業所にとっては、工賃額の高低が自分たち仕事に対する評価軸となった訳である。B型を利用する精神障害のある人は、その障害が持つ特性もともない多様な「ゆらぎ」と共に、日々変動する状態を抱えながら利用されています。その利用者の中には、「工賃」はもちろん大切ですが「工賃(額)では測れないもの」を求め、利用されている方はいないのか?事業所は多様な利用者ニーズに対して工賃が発生する生産活動以外の生活支援も多々あるのではないか?という声が全国の事業所から聞こえてきました。本調査研究は、日本財団助成金事業のもと、全国精神障害者社会福祉事業者ネットワーク、日本精神保健福祉事業連合の全面的な協力を頂き、全国のB型を利用されている精神障害のある方と、その事業所職員にアンケートを行い、利用者の満足度をもとに「現在の工賃額で事業を評価する報酬が実態に即しているのか?」について、利用者の声(満足度)を軸に、支援実態に即した事業の在り方について検証することが目的で実施されました。調査結果としては、事業所の平均工賃額(月あたり)と利用者のサービス満足度に関連はなく、賃金よりも強く関連していたのは「利用者が感じる支援のリカバリー志向性」等でした。つまり、現在の平均工賃額で報酬単価を設定し事業評価を行う国の方向性は、利用者のニーズを反映しているものとは異なっていることが調査結果から見えてきました。地域生活を送る中で、精神障害のある利用者は何を望んで、何を求めてB型を利用しているのかということを改めて考えるきっかけともなる調査結果を得ることができたと言えます。
この度、本調査については「実態調査報告書」を作成しました。報告書データを公開致しますので、詳しくは「実態調査報告書」をご覧ください。
厚生労働省令において示された「地域移行支援型ホーム」の取り扱いについて
2015年6月6日付にて全国の都道府県・政令市・中核市を対象に表記調査を行った結果につきまして、最終のとりまとめを作成いたしましたので公開致します。
この調査は
・病棟転換型居住系施設について考える会
・NPO法人 全国精神障害者地域生活支援協議会
の共同調査として行われました。
(公開している資料につきましては、8月11日付にて作成された内容となります。)
参考として、調査票及び省令改正交付の通知(新旧対照)を掲載いたします。
地域移行・地域定着支援の充実強化に向けた事例収集とガイドライン
2012年3月
現在、精神障害者の地域移行にかかる事業として地域生活支援事業における「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」が全都道府県において実施されています。本事業は、社会的入院の解消を図る国の方針を背景に、国の補助制度として各自治体による取り組みにより推移しています。
その実態は、地域間での取り組みに規模・内容ともに大きな隔たりが生じています。そして2012(平成24)年度からは補助事業として行われてきた地域移行支援、地域定着支援、住居入居等支援事業(居住サポート事業)が、障害者自立支援法による個別給付事業として再編され、一部事業が補助事業として実施されるという新たな展開を迎えることとなりました。
地域移行支援は住まいの確保が大きな課題であり、物件確保に関して、情報収集や入居あっせん等の種々の調整をはじめとする「入居支援」が肝要です。そして入居後の暮らしの維持継続が必要であり、永続的な支援を保障するシステムが必要となります。したがって街での暮らしの永続性を担保するには、従前からの居住支援系事業(グループホーム等)ならびに居住サポート事業などの個別在宅生活を支える事業の活性化がとても重要です。しかし地域間格差は歴然たる事実で、居住サポート事業の実施も全国市町村のうち13%の実施にとどまっており(2011(平成23)年厚生労働省発表)、街での暮らしの支援はぜい弱なままとなっています。
これからの事業展開を図る際に、地域移行・地域定着支援、そして居住サポートの実態やその手法の要点を先進的取り組みの中からくみ取ることと、内容を精査し、実践につながるよう、時宜を得た臨場感のある情報を配信することが極めて肝要という認識にたち、2011(平成23)年度下期より検討チームが立ち上げられ、厚生労働省の研究事業として本調査研究ならびにガイドライン策定に着手した次第です。
具体的には、全国5か所の先駆的な地域(自治体や圏域)に対するヒアリング、実地調査をもとに、精神障害者への支援に限らず、入所型施設に長期に入所している障害者への支援活動も視野に入れ、実践の実相を把握する中で、真に必要な地域移行とは何か、また、目的を達成する上で必要となる事業実施の仕組みや仕掛け、さらにその地域の文化に沿った工夫やアイデアなどについて精査しました。
調査により集積された情報の分析を通じて編纂された本ガイドラインが、現状を捉え、限界をこえ、そして全国での展開に弾みをつける一助となれば幸甚に存じます。
目次・事例集
ガイドライン
資料①
資料②
資料③
資料④
精神障害者の地域生活を支える地域活動支援センターと就労を中心とした個別給付事業との連携のあり方に関する調査研究報告書
2009年3月
全国の精神障害者地域生活支援センターや小規模作業所、小規模通所授産施設の新体系移行の実態や移行後の運営状況を把握し、移行後の効果的な運営事例を紹介することを通じて、これらの拠点の移行先の中心となる地域活動支援センターならびに相談支援事業所、就労系事業を中心とした自立支援給付事業について、従来の活動をさらに発展させていくための事業展開の方法と、それら各事業所間の連携によるサービス提供体制のあり方について提言を行うことを目的として実施した調査研究です。